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【トップに聞く 2023】ZOZO 澤田宏太郎社長 「買う以外」の施策から探るアフターコロナのECのあり方

ZOZO 澤田宏太郎代表取締役社長兼CEO

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ZOZO 澤田宏太郎代表取締役社長兼CEO

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【トップに聞く 2023】ZOZO 澤田宏太郎社長 「買う以外」の施策から探るアフターコロナのECのあり方

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 FASHIONSNAPの新春恒例企画、経営展望を聞く「トップに聞く 2023」。本年は、アフターコロナにシフトする中で各企業に求められている「イノベーション」をテーマにお送りする。

 第8回は、ファッションECモール「ゾゾタウン(ZOZOTOWN)」を運営するZOZOの澤田宏太郎代表取締役社長兼CEO。2022年末には初のリアル店舗を出店し、“超パーソナルスタイリングサービス”の提供をスタートするなど「買う以外」の施策を進めている。3本柱の施策を切り口に、アフターコロナのECのあり方を聞いた。

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「買う以外」の種をまいた一年に

―2022年を振り返って、どんな一言で表せますでしょうか。

 「実行」ですかね。「『買う』以外のトラフィックも増やす」「生産支援に踏み込む」「技術ライセンスの販売にトライ」を戦略の3本柱として2021年から取り組んでいて、初年度はその準備に時間がかかってしまいましたが、2022年はそれが実際に世に出せた。そういった意味で「実行」というのが2022年を表す一言ですね。

―まさに「イノベーション」を実現できた一年でしたか?

 何をもってイノベーションと呼ぶかによりますよね。僕としてはイノベーションは結果論だと思っているんですよ。「世の中をあっと言わせよう」とか「ユーザーのためになることをやろう」というのはZOZOの中ではDNAに組み込まれているので、それを当たり前のように推進した一年だったと思います。

―結果としてイノベーティブだった、と評価できる施策はありましたか?

 何年後かに「これはイノベーティブだったね」と言われたら嬉しいなという施策はあります。1つは、昨今メディアでも取り上げていただいた「niaulab by ZOZO(以下、似合うラボ)」です。これに関しては、我々としても考え抜いた施策ですし、皆さまからすごくポジティブな反応をいただいています。そういった意味では将来のZOZOにとって飛躍につながる年になったように感じています。

広々とした店内

「niaulab by ZOZO」店内

 2つ目は「生産支援」に踏み込めたことです。2022年秋冬シーズンからブランドがデザインした服を我々の生産背景で、しかも受注生産方式で取り組んでいます。今はなくなってしまいましたが、プライベートブランドの展開で得られたノウハウをなんとしてでももう一度ビジネスに繋げるんだ、という思いもあります。あとは、サステナビリティですね。大量生産・大量廃棄の問題がアパレル業界ではずっとついて回っているので、我々としてもその問題に切り込み課題解決に寄与したいと考えています。型数は目標値にまだ及ばないですが、まず第一歩を踏み出せた。ブランド側の反応も良いので、2023年以降はこれを拡充していこうと思っています。受注生産は拡充すればするほど効率は悪くなるのですが、そこがこのビジネスの勝負所。提携している中国の工場の方ではオペレーションの改善が見られている状況ですし、今後数年かけてその勝負に挑んでいきます。

 3つ目は「ZOZOFIT」を出せたことですね。計測技術を外販という形でビジネス化しようと方針を立てまして、米国ではありますが実現しました。まだ始まったばかりですが、生活のルーティーンに取り入れている方が一定数いたりと結果も出ている状況です。すごく爆発的に広がっているわけではないのですが、質という意味で手応えを得始めた、という感じですかね。フルパッケージで全部考え抜いてから始めるというよりは、まずは世に出してみて、フィードバックを受けながら考えていくというのがZOZOのDNAとしてあるので、そのアプローチで発展させていこうと思っています。2023年もさまざまな機能を追加したり、プロモーション方法も少し変えていく予定です。ある程度の感触が得られれば、日本での展開も想定はしています。

澤田社長のインタビューカット

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 最初に戻りますが、似合うラボについても同様で、12月に体験応募受付を開始していて、一般のお客様は今年2月から体験していただくことになっています。今後はもしかしたら多店舗展開もありえると思いますし、来年には2号店ができるのかもしれない。いろんなやり方があると思うんですけど、似合うラボ自体が1つの似合うロジックを見つけるための場所なので、そのロジックをどこまで突き詰められるかというのも一つの勝負ですね。

 なので、総括すると2023年は昨年実行したものをどうやって広げていくかがポイントになる一年になっていくと思います。

「モールと自社ECは共存できる」

―リアルの消費が回復してきているなかでECの伸び悩みを懸念する見方もあります。足元の状況はいかがでしょうか?

 少なくともゾゾタウンに関してはその傾向はほぼ見られていないです。コロナ前はファッションをECで買うことに抵抗があったけれども、コロナ禍に試しにECで購入してみたらECの良さに気付いた、という人が多くいらっしゃるというイメージで、是が非でもリアルじゃないと買わないという人は本当に少なくなってきていると感じています。ECとリアルどちらも「買う場所」の選択肢として持っていて、時と場合によって選ぶ、という考えが広まっていると捉えています。

―そのなかで見えた課題はありましたか?

 課題というよりは、逆にZOZOとしてはすごくチャンスが多かったですね。コロナでリアルとECの間の壁みたいなものが、在庫の面にしても人の感情面にしてもぐっと下がったので、「ゾゾモ(ZOZOMO)」自体も広めやすい環境になっています。特に何か環境面でネガティブに感じていることはありません。

※ZOZOMO:ブランドと実店舗をつなぐOMOプラットフォーム。ZOZOTOWN上での実店舗の在庫確認・取り置きサービスや、ショップスタッフの販売サポートツール「ファーンズ(FAANS)」、ブランドの自社ECとゾゾタウンの在庫シェアリング「フルフィルメント バイ ゾゾ(Fulfillment by ZOZO)」など複数のサービスを提供している。

澤田氏の手元

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―競合にあたる楽天もOMOを推進しています。ZOZOMOならではの強みは?

 やはりブランド数、商品数、お客様の数ではないでしょうか。我々の顧客ベースで店舗にお送りできる人数はそれなりに大きな規模ですから、そこにZOZOMOのサービスの価値を感じてくれる可能性は非常に高いと思います。また一部のパートナー企業では、店舗で欠品している商品の在庫がZOZOBASEにある場合、店頭で決済をおこない、ZOZOBASEからお客様の自宅等へ商品を直送できる「顧客直送」の取り組みも始まっています。2023年以降も、我々がブランドのECを支援していることが前提にはなりますがそういった取り組みを増やしていきたいですし、将来的には提携していないブランドの在庫も含めてできることを模索していきます。

―ブランドの自社ECへの送客は、ゾゾタウンの取扱高にも影響しそうですが。

 特に懸念はありませんね。僕はそもそもEC支援のサービスを立ち上げるためにZOZOにジョインした人間なのですが、長く取り組んできたなかで「モールと自社ECは共存できるもの」であると感じています。店舗の空間や店員を含めてブランドの居心地の良さを感じてリアルで買う人もいれば、ふらっとモールでいろいろなモノを見て買いたい人もいる。その割合を考えると、リアルから自社ECに送客したとしても、自社ECとゾゾタウンのユーザーの割合は大きな偏りなく落ち着くんだろうなと思います。

―ゾゾタウンのユーザーの平均年齢は年々上がってきています。「若年層に強いゾゾタウン」が強みだったと思いますが、この現状をどのように捉えていますか?

 ユーザーの年齢層は20代前半と30代後半に大きな山があります。その山を見る限り、特に20代前半のユーザーの方に対してはしっかり捉えられてるなという感覚があります。サービスの裾野も広がっているので40代〜50代の人もユーザー数が増えてきている、という見方もできるので、平均年齢が上がっているのはそういった背景が考えられます。一方で、可処分所得は大学生ぐらいから出てくると思っているので、10代後半は僕らがあまり注視していなかった層なんです。今の高校生はインターネットに触れている世代なので、今期は特に10代後半の女性に対してウェブ広告などでプロモーションをかけて、顧客獲得につなげていきたいと思っています。

※ユーザー平均年齢の推移(いずれも2020年3月期第2四半期→2023年3月期第2四半期)
男性 31.8歳→31.9歳
女性 33.8歳→35.0歳

―若年層の利用が増えている「シーイン(SHEIN)」がいま存在感を示しています。

 僕の経験値からすると、競合に引きずられると結果として効果的な施策は出てこないんですよね。僕らは僕らで若い人たちに対してアプローチをかけるけれども、対抗軸として強く意識していくことはないと思います。

澤田社長のインタビューカット

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―20代の若者の購買傾向に目立った特徴はありますか?

 やはり低価格帯の商品が動いています。ただ、プライスプロモーションが動いた時などは高価格帯も売れる傾向にありますよ。決済手段で言えば、「ツケ払い」が若い人に受けています。

※ツケ払い:商品受け取り後に支払いが可能。利用限度額は最大10万円。

―昔はツケ払いのようなサービスは考えられなかったと思います。

 僕らも半信半疑ではあったものの、蓋をあけてみると、若い人たちがバイト代にツケ払いを合わせて少し高いアウターを頑張って買ってくれたんですよね。導入したのが秋口でちょうどアウターが欲しくなる時期というのもあって20代のユーザーさんがすごく増えました。

「ゾゾコスメ」は年商100億円へ

―コスメの専門モール「ゾゾコスメ(ZOZOCOSME)」はまもなくオープンから2年を迎えます。

 順調ですね。今年は「年商100億円」を目指しているので、現場含めて本気で取り組んでいます。

―「年商100億円」はかなりの規模ですよね。

 僕らはアパレルを中心にここまでの規模に大きくしてこられたので、経験則から「今この成長のフェーズで何をしなければならないのか」といった感覚はわかっているつもりです。とにかく今は年商100億円というところにたどり着ければ、コスメブランドからのゾゾタウンの見え方は大きく変わってくるはず。まだ正直様子を見てるブランドさまもいっぱいいるので。

北村匠海を起用したホリデーコフレキャンペーンWEBCM

―コスメで勝負できるところはどういうところだと考えていますか?

 まずはやはり、アパレルを買っているユーザーを多く抱えていることが僕らの圧倒的な強みです。プロモーションに関してもアパレルとコスメのクロスショッピングを促進しています。

―アパレルとの大きな接点は、コスメブランドにとって魅力的に映っている?

 そうだと思います。アパレルとコスメの相関は絶対あるはずだと思うので、データが蓄積されれば販促にも活かせるのかなと考えています。

信頼感がなければリモートワークはうまくいかない

―2023年はどんな年にしていきたいか、改めて教えてください。

 2022年に世に出せたものを、とにかく花開かせるというのがテーマ。拡大の第一歩になるような年にしたいですね。その中でも特に「似合う」に関しては一番注力していきたいです。

―ゾゾタウン事業の取扱高はこの先、伸び率の鈍化は避けられないように感じます。見通しを教えてください。

 何年後かはわからないですが、EC化率が落ち着くタイミングは必ず出てくるので、そのために我々としてはEC販売以外のところで、いかに利益を作り上げていくかというのがここ数年の大きなテーマになりますね。

澤田社長のインタビューカット

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―アフターコロナのECの役割についてはどのように考えていますか?

 先ほどのZOZOMOの話じゃないですけど、「決済&配送インフラ」になっていくと思いますね。店舗で選んでも買うのはネット。ネットというよりも、ネット上の決済の仕組みを使って決済するという考え方になるんですけど。ネットの場合は在庫が集約されてるし、商品データも全部紐づいているし、POSレジとは異なり決済手段も簡単に選べますから。

―本社屋向かいに「ZOZOSTUDIO」を建設すると発表がありました。今後は動画コンテンツを強化していく?

 そうですね。似合うラボの開設にあわせて「niaulab TV by ZOZO」という動画チャンネルも始めましたので、そのためのスタジオとして使うケースもあれば、僕が社内ラジオをやっているのでそのスタジオとしても使うなど、動画に限らず様々な用途でスタッフが活用することを想定しています。建物自体、基本的な構造だけが存在するシンプルな箱のような空間になる予定なので、どう作り込んでいくかは“超DIY”でやろうと思っています(笑)。

「niaulab TV by ZOZO」より

―働き方の部分では、オフィス回帰が広まっています。

 現在は部署ごとで出社頻度が異なるのですが、僕らも将来的には週2日出社にしようと思ってます。

―リモートは組織の結束力が向上しにくいという見方があります。

 リモートワークはベースとして信頼感があるとうまく機能するんですけど、それがない中でリモートワークをやるとうまくいきません。我々の企業カルチャーとしてリモートでもコミュニケーションが活発に行われていたので結束力が落ちることはなかったと思いますが、リモート期間が長く続いたり、新しい社員が入ってくると劣化はしてきてしまう。やはりある程度の阿吽の呼吸で動けるというのが強い組織だとは思っているので、そのためにはやっぱり対面でのコミュニケーションは必須ですね。

(聞き手:伊藤真帆、福崎明子)

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