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堀内太郎がメンズブランド「th」で原点へ、ベーシックに宿る独創性

堀内太郎

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堀内太郎がメンズブランド「th」で原点へ、ベーシックに宿る独創性

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 来年10周年を迎える「タロウ ホリウチ(TARO HORIUCHI)」のデザイナー堀内太郎が、メンズブランド「ティーエイチ(th)」を立ち上げた。アイデンティティを反映させながらシンプルで実用性の高いアイテムを展開し、ファーストコレクションは好調。ウィメンズとは異なるアプローチだというティーエイチの服は、どのような視点で作られているのか?

ティーエイチが目指すリアリティ

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ーメンズブランド立ち上げの経緯を教えてください。

 「タロウ ホリウチ」は来年で10年を迎えるので、会社的な成長を考えると自然の流れだったんですが、「MUJI Labo」のデザインを務めさせて頂くことになったのは1つの契機になったかと思います。「MUJI Labo」では「ワンラックの生活」というできるだけミニマルな服のラインナップを作るというコンセプトのもとデザインしていたんですが、自分の中のテーマ性と共通する部分があって。それをメンズウェアでもアウトプットしていきたいと考えたんです。

ーデザイン手法は、メンズとウィメンズでは違いますか?

 全く別ですね。ウィメンズはインスピレーションを起点に、イメージを落とし込んでいます。一方でメンズはより自分に近いというか、最初に作りたいものがあってそれをゆっくりと形にしていく。メンズでの物作りはデザインがシンプルな分、仕様や内部構造、強度などの検証にかける時間が自然と長くなっています。メンズ独特の構造部分はやはり難しくて、そこにはしっかり時間をかけるようにしています。

黒のジャケットとスラックスを身につけた6人の男性が歩いている様子

「th」2018年秋冬コレクション

ーメンズウェアのデザインで重視していることは何でしょう。

 ウィメンズは新鮮味が重要視され、時代の変化やムードに依拠する部分があると思うんですが、メンズは実用性やユーティリティが重視されるように感じます。それにデザインの要素もウィメンズと比べると制限されるので、アップデートという概念が大事なのではないかと。生地にはじまり、芯地の硬さや柔らかさ、ポケットの深さなどミリ単位の微調整で、表情やクオリティが変わってきます。一見地味に見えるアプローチも、ウィメンズと違うプロセスでやっていることにも深い楽しさを感じています。

ー自身で着用できるというのも大きな違いなのでは。

 自分でサンプルを着て微調整ができますからね。メンズはまず自分サイズのサンプルを製作し、着て細かい部分の確認をします。直に感じたことを反映させるようにしています。

ーリサーチを重視するデザイナーも多いですが、ティーエイチではどうでしょうか。

 今の所はしていません。自分が好きで集めていた90年代や00年代のデザイナーズのアーカイブや軍モノの古着などの蓄積がベースになっており、そこから着想を得て現代的なデザインに落とし込む作業が多いです。リサーチよりも、自分の中に蓄積されたものを吐き出すという感覚です。そして意識しているのは、自らの生活の中で欠けていると思う服を作ることで生活の補完を試みるということです。

ートレンドの意識は?

 あえて考える必要はないかなと。男性である自分が良いと思うものは、たとえ少なくても既に市場に存在していると思っています。僕が良いと思ったものが市場にない可能性があるウィメンズとは、そこが違いますよね。だからこそ振り切れたというか、はっきりとした意志をもって判断できるのが、メンズの良いところだなと思います。

ーパターンは自社ですか?

 ウィメンズは自社ですが、メンズはテーラードジャケットなど一部をアントワープ在住のパタンナーにも引いてもらっています。ヴィジュアルは80年代、90年代に「マルタン マルジェラ(Martin Margiela)」や「ラフ・シモンズ(Raf Simons)」のヴィジュアルワークを手掛けた写真家のロナルド・ストゥープス(Ronald Stoops)にアントワープで撮影してもらいました。今住んでいる日本と、自分のルーツとも言えるアントワープの人やクリエイションを交えて複合的なレイヤーで作っていきたいと思っています。

黒のセットアップを着用した長髪の男性

「th」2018年秋冬コレクション

ーアントワープに依頼したパターンの仕上がりはいかがでしたか?

 テーラードは襟のサイズや角度など細かい部分で表情が変わってきますが、バランス感が独特ですね。どっしりとした重みが新鮮でした。

ー堀内さんにとってアントワープはどういったイメージなのでしょうか。

 陰鬱な美しさがある街だと思います。アントワープ出身のヴェトモン(VETEMENTS)のデムナ(デムナ・ヴァザリア)やラフ・シモンズ、ヴェロニク・ブランキーノ(Veronique Branquinho)など数えたらキリがないですが、比較的どこかシニカルな要素がある。ティーエイチもそういうムードを携えたブランドだと思っています。そういった自らのルーツとも言える感覚をしっかりと取り込んだブランドにティーエイチもできればと考えています。

ーアントワープ王立芸術学院の卒業ショーでもテーラードを作っていましたね。

 学生時代からテーラードをベースにしたデザインを多く作っていました。今、その時に少し戻っている感覚があります。

ー原点回帰。そして自身のリアリティに近いということでしょうか。

 そうですね。メンズは禅問答のようですが実用的かつ、いかにデザインせずにデザインするか、みたいなところがあるなと。

ープロダクトデザインにも通じる考え方ですね。

 それに近いかもしれないですね。ウィメンズはシルエットも素材も特殊になると細部にあまり目がいかないのですが、メンズは基本形が限られているのでディテールが目立ってくる気がします。その微調整は身を以て大変なことだと実感して。しつこいくらいに繰り返し修正を行なっていたいと常に思っています。

インタビューに答えるファッションデザイナーの堀内太郎

ーアイデアをウィメンズから引用することもありますか?

 デザイン的な部分ではないですね。逆に構造の部分など勉強することがたくさんあったので、メンズからウィメンズに活かされることの方があるかもしれません。

ーベーシックなアイテムは定番展開もできそうですが、そのあたりの考えは?

 定番化については考えています。ものづくりの根底、ベースを作り込んでいく必要は絶対にありますし、まずはそこに集中したいと思っています。

ー昨今のストリートブームについてはどのように受け止めていますか?ラフ・シモンズなどは否定的な意見を発していましたが。

 ストリート自体、もはやブームじゃなくて自然なものですよね。モードもストリートもない、ブレンドされたナチュラルなものの方が、今のファッションの主流な動きだろうなとは感じています。新富裕層が出てきたことで階級の境が西洋においても曖昧になってきている時代だからこそだと思いますし、それこそ富裕層も「シュプリーム(Supreme)」を着る時代ですよね。

ーロゴアイテムはどうでしょう。

 作ることに意味を見出せれば。

アートにあってファッションにないもの

ー堀内さんはアートに造詣が深いですが、ファッションにもアートのようなコンテクストが必要だと思いますか?

 例えばジョン・ガリアーノ(John Galliano)のような天才肌のデザイナーは例外かもしれませんが、通常においてはコンテクストありきの方が理にかなっていてデザインのしやすさはあると思います。コンテクストは、読み取りで見え方が変わってくるゲームでもありエンターテインメントの様なものですが、個人的にはそういう見方をする人が増えればいいなと。ただヨーロッパの場合は美的感覚に長けていると同時に、コンテクストを読む能力を持っている様に思うのですが、日本は美的感覚を養わないままコンテクストを把握しようとするのか、ズレが生じてしまっている印象があります。加えてアート自体、日本においては敷居が高いイメージがまだあります。でも欧州はエンタメとして消費されていて、とても日常的。日常的である事がとても大事な気がします。センスのある人が上に立って全体の方向性を定め、みんなを引っ張っていくことが普通に出来ている様になってくれるといいなあと。

ーそういった意味では、アントワープはコンテクスト重視のイメージがあります。

 元々アントワープのファッション自体の始まりが、70年代末にパリという完成されたモードの世界にどの様にしてベルギーの田舎町デザイナーが切り込んでいくのかというのをしっかりと戦略立てて作り上げていったものだったと思うのです。それが、パリの煌びやかなファッションに対抗するために日本の「コム デ ギャルソン(COMME des GARÇONS)」や「ヨウジヤマモト(Yohji Yamamoto)」をアントワープ流に再解釈したコンセプチュアルファッションでした。そういった意味では、コンテクストそのものがアントワープファッションというものを形成しているとも言えるのではないでしょうか。

直営店も?堀内太郎が考える服と店の理想の関係

ーティーエイチの今後は?

 年2回、新作を発表していきます。コレクションテーマは特に設けず、いま店頭に並んでいるのが「001」で、次の「002」を展示会で発表したところ。「001」は評判が良く、アディッション アデライデ(ADDITION ADELAIDE)では消化率も良いようです。

ーウィメンズの売上を超えることも考えられますか?

 今の数字から考えるとあり得えるのではないでしょうか。素材や縫製には当然こだわっているのですが、あくまで日常の中で着られるものとして捉えています。

ー自社ECも立ち上げましたね。

 常に商品を供給できてコレクションが全て揃う場所を作りたいと、ずっと考えていました。家具も扱っていて、服だと3日ほどでお届けできます。

ーECの次は実店舗ですか?

 検討しているところです。

ータロウ ホリウチで10年、そしてティーエイチの展開はこれからだと思いますが、目標は?

 売上目標は決めていません。好きなお店と深く繋がっていきたいので、ティーエイチは卸先もまずは9店舗と限定して拡大路線をとらないようにしています。今はプロダクトをより良くしていくことが一番の目標ですね。次回の「003」コレクションでは面白いプロダクトをいくつか発表する計画で、徐々にラインナップを増やせればと考えています。近くアントワープのブランドとのコラボレーションを発表する予定です。

(聞き手:芳之内史也)

デザイナー

堀内太郎

Taro Horiuchi

1982年、東京生まれ。2007年アントワープ王立美術アカデミー首席卒業。2010年春夏で「TARO HORIUCHI」を立ち上げる。2012年第30回毎日ファッション大賞新人賞・資生堂奨励賞受賞。 2018年秋冬コレクションより「th」をスタート。

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